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夏に鍋を。背中に手を。

■ 背中に手を当てると、身体が語りはじめる

人の背中に手を当てていると、そこから“声”のようなものが聴こえてくることがあります。

もちろん、実際に音がするわけではありません。けれど、触れていると「何かを語っているな」と感じるのです。

違和感、張り、冷え——

それらは、身体が伝えてくれる“無意識の叫び”のようなもの。その方の生き方のクセが、そっと浮かび上がってくる瞬間でもあります。

■ 野口整体と操体法から受け取ったこと

私は20代後半から、文献を通じて野口晴哉先生の野口整体や惀気法を独自に学んできました。著書「風邪の効用」は、当時体の弱かった私にとってコペルニクス的転回をもたらした一冊でした。

もう一人、大きな影響を受けたのは「操体法」の橋本敬三先生です。「からだの設計にミスはない」という言葉には今でも深くうなずかされます。

そうした背景もあって、現在でも施術のときは「痛みそのもの」よりも、その奥にある“感じられていないもの”に意識を向けています。

■ 触れたときに伝わる、違和感と冷え

 

実際、手を当てるだけで分かることはたくさんあります。

違和感のある場所は、強く押さなくても、むしろ「触れているかいないか」くらいの柔らかさで手の平を静かに当てていると、何かが伝わってきます。

冷えている部分には躍動感がなく、まるで時間が止まっているような気配さえ感じられます。私はそうした場所を「本人の意識が届いていない場所」と捉えています。


実際、施術中にそっとその場所に触れると、「えっ、なんで分かるんですか?」と驚かれたり、「よくそこに気づいてくれましたね!」とホッとした表情を見せてくださることはよくあります。

 

■ ぬくもりを差し出すということ

 

こうした“冷え”のような場所に対し、いきなり強く揉んだり押したりすることを私はしません。その部分は、まだ本人にとって“守っている場所”のようなもの。突然強く刺激すれば、防御反応が出てしまうからです。 

 

だから、まずはただ手を添えます。


ほんの少し皮膚が揺れるくらいの力加減で、そっとぬくもりを差し出すようなイメージで。

そして、冷えた場所が少し温かみを帯びてきたところで初めて、身体を本来の位置に収めるための整体に入っていきます。

 

■ 冷えは、静かなサイン

「冷えは万病の元」という言葉がありますが、本当にそうだと思います。

人は亡くなった際に「冷たくなっている」と表現されます。だからこそ、ぬくもりというのは“いのちの証”なのだと感じています。

■ 温めるならサウナでもよい?

「温めればいいなら、サウナでもいいの?」と思う方もいるかもしれません。けれど、実はそう単純ではないのです。

たとえばサウナのように全身を一気に温めてしまうやり方だと、局所的に冷えている部分の感覚が却って分かりづらくなってしまうことがあります。サウナやロウリュなどはまた別な楽しみ方と考えるべきでしょう。

ではどうやって体を温めるのが良いでしょう?
私はこんな提案をしています。

■ 夏こそ、鍋を

「夏こそ、鍋を食べましょう」

意外に思われるかもしれません。でも、鍋という食べ物は身体を内側からやさしく温めてくれます。

うちでは湯豆腐鍋をよく作ります。豆腐と出汁だけのときもあれば、野菜や肉を加えて水炊き風にすることもあります。

お腹の真ん中からじんわりと温まって、なんとも心地いいんです。それをエアコンの効いた涼しい部屋で食べる笑—— こんな現代の贅沢はないだろうと私は考えてます。

■ 熱があるところに、気が巡る

体が温まる。
熱があるところには、気が巡ります。
エネルギーとは、すなわち“熱”です。

夏はつい冷たいものに手が伸びがちですが、冷えた身体では心まで冷えてしまうこともあります。

「人の不幸は’寒い”と”ひもじい”から生まれる」は、じゃりン子チエの名ゼリフだと思ってます。

■ 背中と食卓に、そっとぬくもりを

背中にそっと手を添えるように、
食卓にも、ぬくもりを添えてみてください。

今年の夏も、やさしく、あたたかく——
過ごしていきましょう。

この記事の著者

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田中 俊郎

幼少期に遭遇した運命的な事故を克服し、心身の健康を取り戻すための独自のアプローチを確立。JADPメンタル心理カウンセラーや整体ボディケアセラピスト、太気至誠拳法や居合など多様な資格と技術を持ち、現在は「ヒーラーの田中」として、苦しむ人々の心身の健康回復を支援しています。